世界を広げるヒント、第19回はあの有名なドン・キホーテ(セルバンテス)です。
この名前で真っ先に思い浮かぶのは、現在では街の雑貨屋でしょうか。
そして、物語を知っている人であれば、風車に突撃していく男ではないでしょうか。
しかし、この本は皆さんの予想を裏切ります。なぜなら・・この男は風車だけでなくとにかく色々なものに突撃して行くのです!
ある時は僧侶、あるときは羊の群れ。
あげくの果ては宿屋で働いている娘にまで「姫!」と勘違いして抱きしめるなど、なんともすごい突撃ぶりです。
(もっとも、他に本命の姫がいるドン・キホーテは真面目に引き下がるのですが)
そして、その突撃の際のドン・キホーテの台詞がファンタジックで実によいのです!
空想の姫(実際はいない)を指して
「その髪は黄金、額は至福の楽園、眉は弧をなす虹、両の目は輝く太陽・・」
空想の騎士(実際には羊)を指して
「黄色の鎧兜に身を固めた騎士、王冠をかぶった獅子が乙女の足もとにひれ伏す図柄の盾を手にしている騎士・・」
何も馬鹿にしているわけではありません。
空想の台詞とそこから続くのは突飛な行動なのですが、不思議と、どこか高貴さが感じられる気がしました。
あと一人、忘れてはいけないのが召使いのサンチョ。昔の主従関係どおり、基本、主人に忠実な人間です。
それがドン・キホーテが聖水と称して油差しを飲ませようとするシーンなど色んなところで「ご主人様ーっ」と、いわゆるツッコミ役として本当に楽しい。
冒険(ドキドキ)、騎士(格好良い)、ボケ・ツッコミ(笑い)、そして悲しみ(錯乱)と要素がたくさん入っている。
そして最後に理想と、想像。
これは、楽しいですね。
最後に、私の予想ですが、みんなドン・キホーテのことを笑いながら、心のどこかで「ちょっといいな」と感じているのではないかと思います。
理想に燃えて、未来を想像して、自分が正しいと思うことを実現するため何があっても、勇敢に前に進む。
この世界はもちろん現代社会ではないけれど、皆が目指したい「美しさ」をそこに感じるのではないでしょうか。
同じく現代に生きる人として、私はそう思いました。
それでは、今回も読んでいただいてありがとうございました。
創造性 ★★★★
実用性 ★★★