さて、第4回は中沢新一さんの著書、アースダイバーです。
この本の題名は直訳すると、「地球に潜って行く人」です。
ただ、読むと、「土地を探検に行く人」という訳が近いかな、と思いました。
すみません、何のこっちゃ分からないと思うのですが、中身としては、
「東京の土地が過去どのような場所であり、その特性が
現在の商業都市としての東京にどう受け継がれているのか」
が書かれた本です。
うーん、そんなこと考えたことも無い。
という方が大半なのではないでしょうか。
この本では、東京の人なら馴染みのある、渋谷や銀座がどういう場所だったのか、を明らかにしています。
「渋谷の駅前の交差点はかつては水の中にあり、宮益坂と道玄坂のなだらかな斜面が取り囲んでいた。
そして、その斜面には墳墓があった。
なぜなら古代、水は死の領域の入り口を象徴していたから。
そして、今でも渋谷の坂にはホテル街があり、そこでは性愛の、死の儀式が行われている・・(精子が死んでいくので)」
など、ちょっと怖くもある内容が散りばめられています。
「銀座は京都から来た銀細工の職人から始まった街。
鉱山技術に関わる職人は金属を含んだ岩石を掘り出して、強い熱を加え、真っ赤に溶けた金属流を加工するなど、
荒々しい、常識破りな感覚が育っていった。
また大もうけしていたので周りがみな銀座者の真似をするようになり、都会性の最先端を歩み始めた」
なかなか普段の感覚では理解しがたいのですが。
読み進めているうちに、あれ、そういう無意識の領域というか、切っても切れない土地の伝承というものが世の中にはある。
そしてそれが、いまの生活にも影響しているんだ!
という感覚が沸き起こってきます。
少し考えると、それが渋谷や銀座じゃなかったとしてもそうなんですよね。
普段、私達は自然と道路を渡り、当たり前のように坂を上っているわけですが、昔はそこに道路なんかなかったわけです。
そう考えると、今この自分の下にある土地も、またいつもと違うものに見えてきて、少し不思議な気持ちになります。
世の中の物は、人間が便利に、快適になるように作られていて、我々は何もそのことに疑問を持たないことが多いと思います。
でも元々は違っていて、そして知らず知らずのうちに影響を受け続けている。
そう考えると、日常って実は日常じゃなくて。
一見「普通」で「奇麗」な自分たちのいる世界は、もっと「息づいた」世界なのかなと。
そういうことを教えてくれる本でした。
最後に。
本は面白かったのですが・・いまの自分の家が怖い場所じゃなかったことを祈ります。(あえて調べない)
それでは今回も、読んでいただき、ありがとうございました。
創造性 ★★★★
実用性 ★★★★
世界を広げるブログ、第18回は「21世紀の歴史(ジャック・アタリ)」です。
今回のテーマは「歴史」このブログで初です。
歴史というと、過去のものであり、あまり世界を広げる気がしないかもしれません。
ただ、見方によっては確かに世界を広げることもあります。この本のように。
この本に出会ったのはもう3年は前でしょうか。
当時から、もっと世の中を知りたくて、この世界ってどうなっているのか、俯瞰的に書いた本は無いかな、と書店を探している
ときに出会ったのがこの本でした。
「21世紀の歴史」では、過去の歴史を紐解き、その延長を考えることで、現代がどういう時代なのか、未来がどういう世界になるのかを著者が語っていきます。
印刷技術、投機、航海技術の発達、蒸気機関、内燃機関、電気と、技術の進歩とともに世界の中心都市も移り変わって行く様が歴史を通して描かれるのは壮観です。
そして、それに連なるのが現在(いま)だと考えると、自分の人生がとても生き生きと感じられてきます。
また、著者が言うには、過去ずっと人類は「個人の自由に最大限の価値を置いて目指してきた」ということです。
そういう、一つの法則があることを知ると、少し世界への理解が深まって行くような気がします。
また、何より自由はいいですよね。
もちろん楽観的な話ばかりではなく、今後格差が広がって行くとか、紛争が起きるとか悲観的な話も多いのですが。。
でも大きな目で見て、人類は自由に向かっているのだとしたら、それは素晴らしいことだと思いませんか。
最後に、この本によると2035年には生態系に危機が訪れる可能性が高いとのことです。
困った、怖い・・けれど。
そんな状態になるんだったら、暇だとか夢が無いとか言っている場合じゃなくて、一人一人、一生懸命自分の役割を生きて、仕事を頑張って行かなければいけない、と思います。
今回はなんだか世界とか、大きい話になってしまいました・・ 苦笑
広い視野を持ちつつ、仕事は地道に、これで行きたいと思います。
今回も読んでいただいて、ありがとうございました。
創造性 ★★★
実用性 ★★★★★
世界を広げるヒント、第25回は進化論(ダーウィン)です。
ダーウィンの進化論!誰でも一度は耳にしたことでしょう。
1859年に刊行されたこの本は歴史に残る名著とされています。
内容ですが、生物の進化に影響を及ぼす条件を様々な観点から書いているのが一つの特徴です
・飼育下/自然環境下の変異
・生物 /自然との闘争
・本能 /習性なのか
・地質学/気候からの考察
・地理的分布から考えて
上記は本書で語られている内容ですが、様々な観点で考えられていると思いませんか。
進化という壮大なテーマについて、臆すことなく、全体を捉えて論証しようというその姿勢に感銘を受けます。
また、最後に要約が付いているなど、一般の人が理解できるように分かりやすく書いているのだと思うのです。
内容的にも、知識が無い人に見せることを躊躇してもおかしくないはずです。
それでも多くの人に理解してほしいという、志の高さと、勇気が感じられます。
そして、一人でここまでたどり着いたというその結果。しかも1859年ですよ!
さてここまで、ダーウィンの様々な「偉大なものへの挑戦」について書いてきましたが最後に作品を読んで感じたことを。
種の起原を読んで感じたのは、我々は皆、進化の過程でそれぞれのルーツを辿ってここまで来た、という共通点が否応なしにあるということ。
そして、途中で種が分化したのだけれど、元はやはり皆、共通であること。
想像に難くないと思いますが、この本が発表された当時、やはり世間からの風当たりはあったようです。
人間が獣から進化したとしたら、黙っていない人たちから。
しかし見方を変えると、今この時代に同じ時を生きているたくさんの人たちが、共通のルーツを持っている。
そのことの方が、よほど神がかっていて、奇跡のように見えてしまいますね。
それでは本日も、読んでいただきありがとうございました。
明日、会社で顔を合わすあの人たちも、電車に一緒に乗っているあの人たちも、皆共通のルーツなんですよねー。
創造性 ★★★
実用性 ★★★★
世界を広げるヒント第32回は文明崩壊(ジャレド・ダイアモンド著)です。
私たちの住んでいる地球では、現存している文明以外にも過去いくつもの文明が生まれ、そして滅んでいきました。
それらの文明がなぜ滅んだのか、本著はそれを解き明かす壮大な試みを行っています。
マヤ文明やイースター島など、誰しも聞いたことがある文明もそれらの中に入っています。
興味深いと感じる方も多いかもしれませんね。
この本では、何が原因で文明が滅んだのかを一つ一つ解き明かして行きます。
・森林破壊
・海産資源の崩壊
・土壌の減少
・外来種による環境破壊
・人口増加
などが、地理的条件等により引き起こされ、文明が滅んできたことが解説されます。
恐ろしいのは、上記原因よりも、それがなぜ止められなかったのかが記載されている章でした。
年々の森林破壊が遅々としすぎていて、感知が難しいことなどは、現在であれば解決可能な気もし、希望が持てます。
しかし、人間同士の利害が衝突する、たとえば昔の鉱業会社で、会社の利益のみを考えて社会側に環境破壊のコストを委ねるような例は現代にも起こりうることであると思われました。
ただし、この本にはもちろん希望も書かれています。環境保護思想が一般市民にまで広がりつつあることなど。
著者が、希望が見えたからこそ子供をもうける判断をしたと語っていましたが、それこそが、もっとも説得力があるかもしれません。
個人的には、物質欲で満足ができなくなった優秀な人材が、さらなる満足を求めて、環境問題のような「やりがいのある」仕事に
向かうのでは、とも思っているのですが、少し意地悪な見方かもしれません!
最後に、この本で考えさせられたのは。
・文明崩壊という非常に大きな「結果」もそれを引き起こす「原因」が幾重にも積み重なってできているものであること。
・大きくてとても手に負えないような問題も一つ一つ突き詰めていけば解ける可能性があるということ。
大きな問題でも、最初から「できない」とあきらめる必要はないということですね!
今週はここまでです。
なお、著者は「銃・病原菌・鉄」という本も書いており、そちらもオススメです。
それでは、本日も読んでいただいて、ありがとうございました。
明日も「世界を広げ」、大きな課題である「楽しさを追求」して行こうと思います!
創造性 ★★★
実用性 ★★★★
世界を広げるヒント、第45回は17歳のための世界と日本の見方(松岡正剛著)です。
松岡さんは日本の文化研究をしている方です。
私が知ったのは東京駅の丸善でユニークな本棚空間を作っていたことから。
縦に並べるだけでなく、横に積み重ねたり様々な空間配置をするその世界がとても新しく感じられました。
さてこの本ですが、日本と世界の歴史を比較しながら、この世界がどのように成り立ってきたかを表している本です。
人間がどのような脳を持っているかから始まり、神話の分析、各地で生まれてくる物語についての分析などが行われます。
圧巻は宗教についてであり、世界の宗教、日本の宗教がどのように生まれ、時代を経て変遷してきたかが非常に分かりやすく書かれています。
ゾロアスター教、ユダヤ教から浄土宗、禅宗などまで。それらの生まれた背景が一つ一つ描かれて行きます。
ジャック・アタリの21世紀の歴史も歴史の流れを知ることができる、刺激的な内容の本でしたが、この本はより濃密であり知識欲が満たされて行くのを感じられます。
どの箇所も新鮮でしたが、特に印象に残ったのが「引き算の文化」について。
「枯山水」寺院における、岩や石を配置することで山や水を表す表現を指します。
水を感じるために水を無くすという考え方、美しく、発想が面白いですよね。
そのような考え方が日本で生まれたということは素晴らしいと思えました。
それでは、今回も読んでいただいて、ありがとうございました!
創造性 ★★★★
実用性 ★★★★