数学は世界を変える(リリアン・R・リーバー)

 

連載をはじめて早5回目。今回は趣向を変えて、学問の世界に着目です。

 

 

「数学は世界を変える」リリアン・R・リーバー著です。

 

 

この本はAmazonで検索して見つけた本ですが、思いがけず、世界を広げることになりました。

 

 

この本は単なる数学の本ではありません。

 

 

書いてあるのは計算式でも無ければ公式でも無い。

 

 

数学の考え方の根底に何があるのか、そしてそれが人間と、この世の中にどういう影響を与えているのか。

 

 

それを、楽しげな挿し絵を交えながら語っています。

 

 

あえて分類するなら、哲学に近いように思われます。

 

 

たとえばあるページでは、塔をモチーフに、どのように、無目的の研究が、現実世界の商品に変わっていくかを語ります。

 

 

1階では現実世界の商品や兵器が並び、2階ではそれを製造する人達がいて、3階では科学を研究する人達がいて。

4階には数学者がいて、5階には芸術家と混じって純粋数学を研究する者がいる、といった具合に。

 

 

5階の人が最初にほとんど芸術と同じ感覚で数学を考え、それが下の階層に段々と降りて行くということを示しています。

 

 

そして、上の階に行けばいくほど、物事は一般化されていきます。

 

 

人種の差異だとか、実際の世界であるような切り分けが無い世界で物事が考えられている。

 

 

つまり、そこには人によって差別されることがない、一つの世界(哲学)がある。

 

 

・・なんだか難しいし、哲学的というか、抽象的な話ですよね。だけれど、非常に素敵な考え方だと思います。 

 

 

もう1つ例を。数学を知ると、この世の中に、単純な「絶対」が無いことが分かるそうです。

 

 

たとえば、北極から赤道に対して2本の直線を引く場合。

その引かれた線をつないで作った三角形の内角の和は、180度ではないそうです。

 

 

なぜなら、地球の表面は平面ではないから、というのがカラクリなのですが。

 驚くのは「三角形の内角の和は180度とは限らない」という事実。

 

 

180度であるためには、その三角形が置かれている場所が平面であるという「前提」が必要になるそうです。

 

 

すると、この例のように、世の中の「正解」は数多くの「前提」の元に成り立っているということが分かります。

 

 

今度はそれを具体化すると。

 

 

たとえば「彼はあまり格好良くない」。

 

 

でもそれは「日本人」という前提から見たものに過ぎない(もっと言うとそう思う人達だけが見た前提)

たとえば「アメリカ人」から見たらそんなことは無いかもしれない。

 

 

「彼女は頭が悪い」でもそれは「記憶力」という一面だけを見てのもの。

「善悪の判断」や「人の気持ちが分かる」という側面から見たら、決してそんなことは無い。

 

 

そんな風に応用できるように私は思えました。

 

 

色んな価値観を持ち、多様性を認める世界。とても素敵だなぁ。

 

 

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

 

創造性 ★★★★

実用性 ★★★★

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エントロピーの科学(細野 敏夫)

世界を広げるヒント、第12回目はエントロピーの科学です。

 

 

エントロピーという言葉、聞いたことはありますか?

 

 

科学の用語ですので、初耳の方も多いかもしれません。

 

 

果たして、エントロピーとは何かと言うと・・これが実は説明するのがとても難しい 苦笑

 

 

それでも頑張って説明を試みますと。(当たり前ですが・・・)

 

 

まずエントロピーは高い、低いで表現します。

 

 

エントロピーが

高い     低い

 

乱雑  ⇔  整頓

不規則 ⇔  規則

覆水  ⇔  盆水

忘却  ⇔  記憶

低温  ⇔  高温

 

 

簡単に言うと、エントロピーが高い状態は乱雑な状態、低い状態は整理整頓された状態です。

 

 

そして、エントロピーは何か外部から力を加えない限りは必ず増加の方向に向かう。これがルールとなります。

 

 

・整理されていた部屋は「片付ける」という力を加えない限りは散らかっていく。

 

・熱いお風呂に水を入れたとき、はじめはお湯の中で温度差があるが、段々と温度が均一になっていく

 

 

という具合に。

 

 

「だんだん拡散していく」のが宇宙のルールなんて、何だか面白いと思いませんか?

 

 

あまり高度な内容は専門家でない自分が話すべきではないので、素人目線でエントロピーという考え方の有用性で思ったことを少し。

 

 

まず、日常生活にも適用できますよね。

 

 

前述のお風呂の温度がだんだん均一になっていく、これがエントロピーの仕業だと考えるとまず、面白い。

  

 

もっとマクロな視点で考えると、たとえば世界の民主化の流れ。

 

 

自由を求める人の心が民主化につながっていくと考えられますが、これも実は、だんだんと世の中は無秩序(あくまで独裁と比較して)に近づくということで、エントロピーの仕業と言えそうです。(そして権力者は力で秩序を保とうとします)

 

 

こんな風に、色々な側面でエントロピーの法則が適用できます。

 

 

そして、逆にこの法則を用いて現実を見つめることで、見えてくるものがあるのではないかと思います。

 

 

 

たとえば、

 

世界のエネルギーには限りがある

→人口増加の現状、やりくりするなら、一人あたりが使うエントロピー(この場合は熱エネルギー)を減少させる必要がある

→無駄なエネルギー消費を押さえる必要がある

→ゴミの廃棄を減らすなど、今よりも工夫して生きる必要がある

 

といった具合に。

 

 

うーん、深いですエントロピー。

 

 

またこんな風に、一つの絶対的な法則があってそれが日常に適用できる科学って、純粋にすごいなー、と思います。

 

 

一つ知っているだけでも、世界が広がりますね。

 

 

ちょっと難しいですけれど 笑

 

 

それでは、今日も読んでいただいて、ありがとうございました。

 

 

創造性 ★★★

実用性 ★★★★

 

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ロビンソンの足あと(高橋大輔)

 

世界を広げるヒント、第14回は「ロビンソンの足あと」です。

 

 

ロビンソンとは、無人島で漂流生活を送ったあのロビンソン・クルーソーのことです。

 

 

この本は、ロビンソン・クルーソーの足跡を追った日本人、高橋大輔さんの探検記です

 

 

著者は作家デフォーの書いた小説上の人物、ロビンソン・クルーソーの、大自然の中で一人生き延びる、その力に憧れていました。

 

が、結局 小説上の人物だし・・と思っていたところ、その人物に実在のモデルがいることを知ります。

 

 

驚きの真実。

 

ただ、彼が実際にどこでどのように暮らしていたのかが分からない、それを突き止めに行く、というのが冒険の始まりになります。(この時点で少しワクワクしませんか?)

 

 

しかし、冒険ですから困難もある。というか、困難だらけなわけです。

 

 

資金が足りない、なかなか人が集まらない、ルールの壁に阻まれる、せっかく探し始めても、簡単には見つからない。。

 

 

ただ、それでもあきらめない彼は、とうとう最後に島のある箇所で証拠を見つけます。

 

それは海図上で距離を図るためのコンパス。その航海士しか持たない道具が、証拠として探していた住居跡で見つかったのです。

 

その帰り道、いつも通っていた道で、一輪の花が咲いているのにはじめて気づいた、というくだりが印象的でした。

 

 

さて、この本から学べることがあります。

 

それは、「現代にも冒険はある」ということ。

 

 

インターネット社会で何でも調べられたり、科学が発達していて、何でも分かる。

 

そのように考えがちではと思いますが、果たして本当にそうでしょうか。 

 

 

未知はある。知らざる真実はある。

 

 

そして、未知のものを探すということが冒険だと言うのなら、冒険はまだ世の中にたくさんあるのではないでしょうか。

 

 

冒険は楽しいですよね!

 

 

私も「楽しさとは何か」の答えをずっと考えていますが、いくら本を読んでもこれが回答、と思えるものはありませんでした。

 

 

きっと歴史の中で答えなんて出てなくて、自分自身で答えを探す必要があるのでしょう。

 

 

その過程がきっと冒険であり、またそれ自体が「楽しさ」でもあるのですが。

 

 

それでは今回も、読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

創造性★★

実用性★★★★

 

 

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生物学的文明論(本川達雄)

 

世界を広げるヒント、第20回は生物学的文明論(本川達雄著)です。

 

 

「ゾウの時間 ネズミの時間」という本をご存知の方は多いのではないでしょうか。

 

 

その著者が、生物学者として環境問題など現代の諸問題にどう取り組めばよいかを語っている本です。

 

 

生き物は柔らかく、人工物は硬い。生き物は湿っていて、人工物は乾いている。そして生き物は丸く、人工物は四角い。

 

 

そして四角く硬い人工物は、だから自然を壊しやすい性質を持っている・・

 

 

と、生物学者というか、本川さんならではの表現で、現代がどんな時代かが語られます。

 

 

この抽象的な表現が、何と言うか本質を付いていて、はっと気づかされます。

 

 

全編を通して、このようなトーンで語られていきますが、中でも私が印象に残った話を二つ

 

 

一つは「ナマコ」の話。著者はナマコが大好きです。

 

 

ナマコは動きも緩慢で、武器も無さそうだし、なぜ絶滅しないのかが分からないから興味を持ったそうです。

ちなみに、なんと、脳も無いらしいです 汗

 

 

で、結論はナマコは攻撃を受けると、ただ体を硬くしたり、また力に応じてドロドロに溶けたりするんだそうです。省エネかつ臨機応変。

 

 

そして、食事はというと、、なんと砂!といっても表面のバクテリアや有機物の切れ端らしいですが。

 

 

そんなナマコの省エネさ、柔らかさがこれからの時代のヒントになると著者は思っているようです。

 

 

また、もう一つは時間の話。エネルギーを使うと時間が早くなる。でも遅ければ遅いでそこに楽しみも見出せると著者は説きます。

 

 

たとえば新幹線で事故があって列車がゆっくり進んだとき、いつもの景色が違って見えたのだそうです。

 

 

同じ物を見ても、速度によって見え方が違う。そのような「時間をデザインする」という考えは均一の物としか考えていなかった自分には、新しい概念だと感じられました。

 

 

そう、時間すら絶対的なものではないということなんですね。

 

 

面白いなー、やっぱり人の思い込みは激しいんだなー、と改めて思いました。

 

 

以上となります。

 

 

明日はせめて、硬い頭をもう少し柔らかくして仕事に臨もうかと思います。

ナマコのように脳まで無くなったら大変困りますけれど。。

 

 

それでは、今日も読んでいただいてありがとうございました!

 

創造性 ★★★

実用性 ★★★★★

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「複雑系」とは何か(吉永良正)

 

世界を広げるヒント第27回は「複雑系」とは何か(吉永良正)です。

 

 

まず「複雑系」聞いたことがある人もない人もいるかと思います。

 

 

端的に言うと、これまでできる限りシンプルな法則に収斂させようとしてきた科学とは異なり複雑なものを複雑なままに理解しようという科学と言えるかと思います。

 

 

・初期状態の差が大きな差を生む

・いくら微分しても直線にはならない

 ・(シンプルな)二点間のモデルを考えてから三点間のモデルを考えようとしても説明できない

 

 

など、これまでは単純な美しい公式で表せると考えられてていたものがそうはならず、「そうではないのではないか」と考え直しているのが特徴です。

 

 

この本では、複雑系の科学そのものではなく、複雑系の科学へと進んで来た「科学」の道のりまた複雑系科学の研究履歴が記載されています。

 

 

その中で特に参考になるのが、科学がこれまで「普遍性」を重視していたため、いつの間にか現代人が「機械的」なものの見方をしてしまっているのではないかと筆者が問うくだりです。

 

 

そして、それにより、知らぬ間に私たちの世界は幾重ものヴェールに覆われてしまい、接し方が規定されてしまっているのではないか、と筆者は続けます。

 

 

言われてみれば、

「必ず」「美しい答えが」「一つだけある」そのように私達は考えがちではないでしょうか。

 

 

本書のとおり、絶対的な真理を夢想せず、複雑なものを複雑なままに見ようとする態度がこれからは重要なのかもしれません。

 

 

単純化を諦めるのではなく、単純化できないこともある、そもそも複雑であることを認める。

 

 

単純化は人間が考えやすくするためのモデルだという割り切りも必要かもしれませんね。

 

 

そうすると、なんだか科学が人間に近づいて身近になった感じがしませんか?

 

 

それでは、本日も読んでいただいて、ありがとうございました。

 

 

複雑な世界だからこそ楽しいということは、きっとありますよね!そんな世界で、明日からまたがんばりましょう!

 

創造性 ★★★

実用性 ★★★

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生物と無生物のあいだ(福岡伸一)

 

世界を広げるヒント第39回は生物と無生物のあいだ(福岡伸一著)です。

 

 

本書はDNA、遺伝子発見までの生物学の歴史を紹介しながら「体の動的平衡」という一つのテーマについて話が展開していきます。

 

 

動的である。逆に言うと、体の平衡状態は静的に保たれているわけではないと著者は説明します。

 

 

何となく、我々は体は部品の組合せであり、全てが合体したものが自分だとイメージしてはいないでしょうか。

 

 

この本の答えはNo。

 

 

生きている中で、常に体は変化し続け、それによって正常な身体組織を保っているということです。

 

 

たとえばある技術によって遺伝子を取り除いても欠損が埋められる仕組み。

 

 

これができるということは、部品の組合せという考え方では説明ができません。

 

 

この本を読んで最も世界が広がったと感じられた瞬間は

 「生物は自らを保つために、壊れる前に自らの細胞を破壊している」

 

のくだり。

 

 

決して、我々は食べ物を補給することで失われて行くカロリーを補給しているだけではないということです。

 

 

そうではなく、常に体全体を変わり続けさせるために補給を行っている。

 

 

これを知って私は、勉強になったと感じると共に、次のようにも考えました。

 

 

なるほど、確かな自分なんてものは存在しないのか、昨日と今日の自分が違うならもっといい意味で気楽に生きてもよいのかもしれないな、と。

 

 

皆さんはどのように考えますか?

 

 

それでは、今日も読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

明日はまた別の自分だと思って、一からがんばりましょう!

 

創造性 ★★★

実用性 ★★★★

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