世界を広げるヒント、第11回はマルセル=デュシャンの「泉」です。
作品はこのようなものです。

トイレにただサインをしただけのもの(*)これが作品として展覧会に出品されました。
*画像左下参照
ん? と多くの人が思うと思います。
そんなものが芸術作品と呼べるのかと。
ただ、もう少し考えると、
「でも、そもそも芸術作品の定義って何だっけ?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
そして、そう思った瞬間に、見た人の世界はこれまでとは変わってきているのかもしれません。
だって、芸術とは何かを考え始めたから。
そう、芸術の定義が、「見た人の世界を少しでも変える物」だとするならば、これは紛れもなく、芸術作品ですね!
この作品が提出された展覧会では大変な物議が醸されたようですが、それはさておき。
「芸術って、作品の表層にある表現だけが全てじゃない。」
「考え方、物事の捉え方、それ自体が芸術になりうる」
そんなことが、この作品から見えてきます。
さて、もう少し見ていきたいのですが、こんな作品を作ったデュシャンとはどのような人物なのでしょうか。
デュシャンへのインタビューが載っている、その名も「デュシャンは語る」という本を読みましたが、何と言うか、すごく飄々とした感じの人で、一言で表すと、「自由」。
たとえば、その本の中で、芸術家にならないために図書館の司書という職業を持ったということが書いてあります。(少なくともニュアンスはそんな感じ)
普通だったら芸術家として有名になって成功したい、ストイックに芸術を追求したい、というような欲が出てくると思うのですが、そのような思いから開放されています。
つまり、何事にも囚われないという意味での「自由」を持っている方なのではないかと。
「泉」の話では芸術作品とは何か?という視点を持ち込んだことを書きましたが、
そのように既存の枠組みを壊し、新たな視点を得ることは心の「自由」につながりますよね。
皆が求める「自由」を体現し、また作品を発信したマルセル=デュシャン。
とかく不自由な私たち現代人が、彼に見習うところはたくさんありそうです。
それでは、今日も読んでいただいてありがとうございました。
創造性:★★★★★
実用性:★★★